2007年4月22日日曜日

『劇場』サマセット・モーム

最近『華麗なる恋の舞台で』という映画も公開された、
サマセット・モームの『
劇場』 。

改めて読んでみると、すごく女性の心の動きが細やかに描かれているな、

とモームに感心(すみません)。
女性がだめオトコについ足をとられてしまうところとか、
一度目が醒めると、適当にあしらいながらも
もう全然そのオトコの存在が気にならなくなってしまうあたりも、
とてもリアルです。

自分の若い愛人の男が、自分を都合の良いように利用しているだけだと
わかりながらも、彼の気持ちをなんとか自分に向かせようと頑張ったり、
だけどすれすれのところで、自尊心がちゃんと生きていて、
その愛人が恋をした別の若い女性を、最後には完膚なきまでに叩きのめしたり、
いちいち、そうだよな、わかるわかる!と、同意をしながら読んでしまいました。

文庫本の解説では、
いわゆる「愛欲」と「愛情」という、愛の二つの側面について、
その移り変わっていく様子などを語っています。
つまり、例えば夫婦愛は、最初は「愛欲」で、時が経つにつれて
「愛情」の側面がより強くなり、「愛欲」はすこし穏やかなものになる、と。
で、この主人公の女優は、夫との「愛欲」部分が冷めてしまいながらも、
女優という職業柄、その事実に耐えられず、他の対象を探してしまうのだと。

けれど、つい初心な(笑)私なんぞは、なんとかして、そのふたつともを、
同じ一人の男性に対して、同じくらいの強さで持ち続けることは出来ないのか!と
頑張ってしまいます。

でもこればかりは、一人で頑張っても仕方がないしねぇ。
男性の側も、同じ努力ができないと。

ただ、以前ある男性に、結婚したら女性は恋人ではなく、お母さんに
変わってしまうから、同じ気持ちを持ち続けるのは難しいんだよ!
という話をきいたとき、ひとつ納得したのが
「全然おしゃれをしようとか、そういう心意気を感じなくなった。」というのと
「子供のことや、家事で忙しい、というばかりで、自分を磨く努力をしない」というもの。

これは今子育て真っ最中のお母さんたちに言わせれば、
「そんな余裕があるかっ!」と怒号が飛ぶかもしれない。

でも、これに関連して「R25」の
「彼女」が「妻」になるといったい、なにが変わるのか
というレビューも興味深かったです。
それによると、彼女が妻に変わったのではなく、
男性が、恋人のまま変わっていないのだとか。
つまり、一緒に生活を組み立てていく、という認識が男性には薄いらしい。
でも女性は、恋人の気分もちゃんと維持しながら、
でも一方で、同時に生活共同体となった相手に、
それ相応の、いわゆる「生活面」も同時進行的にてきぱき進めることができちゃうから、
男性は戸惑うのかも知れません。

だから、この「劇場」においては、女主人公が、お金も稼ぐすこし男性的な女性で、
彼女の夫の側が、多少「主婦」的な役割を二人のあいだで担っているから、
彼女は「愛欲」を満たす矛先を探すという気持ちが、ついふっと芽生えてしまったのかも。

とはいえ、でもな、最後に「劇場」の女主人公が、
若い愛人への愛欲を克服して、その泥沼から抜け出した後、
「食欲」という新しい快楽に浸るのです・・・・・・。
うむむ、モームさん、あなたはやっぱりすごい!
リアルすぎます!!!

0 件のコメント: